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給与から引かれる社会保険料はどうやって決まる?

給料明細に書かれた社会保険料の金額を見て、思わずため息が出てしまった…ということはよくありますよね。「給料が増えると社会保険料も高くなる」というイメージはあっても、具体的な計算の仕組みまではあまり知られていません。

実は、毎月実際に支払われる「1円単位の給与額」にそのまま料率をかけているわけではないのです。

この記事では、健康保険・介護保険・厚生年金保険(狭義の社会保険)を対象に、給与から引かれる保険料の求め方や、金額が変わるタイミングについて解説していきます。

※この記事は、2026年10月時点の情報をもとに作成しています。法改正等により内容が変更される場合がありますので、
最新の情報については各公式サイト等をご確認ください。

目次

社会保険料の計算で使う「標準報酬月額」とは?

社会保険料を求めるとき、「1円単位の給与額」ではなく、給与(報酬)額をざっくりと区切った「仮の金額」を使います。

もしも、毎月変動する実際の給与額を使って1円単位で社会保険料を計算しようとすると、事務処理に大変な手間がかかってしまいます。そこで、1か月の総支給額(「報酬月額」といいます)を一定の幅で区切った仮の金額を各自に割り当て、そこに保険料率をかけて計算します。

この仮の金額というのが「標準報酬月額(ひょうじゅんほうしゅうげつがく)」です。

例として、協会けんぽ東京支部に加入する会社が保険料率等を参照する際に使用する一覧表を見てみましょう。

参考:協会けんぽ「令和8年度保険料額表(東京)」

表の左側にある「標準報酬」の「月額」欄に書かれているのが標準報酬月額で、隣の「等級」はそれぞれの標準報酬月額に振られた番号です。

例えば、報酬月額が83,000円の人も92,999円の人も標準報酬月額は同じ88,000円です。

等級の数は、健康保険が50等級、厚生年金保険が32等級(カッコで示された数字)あります。右側の「報酬月額」の欄で、自分の報酬月額がどの範囲に当てはまるかを確認すると、標準報酬月額と等級がわかる仕組みです。

標準報酬月額は、入社などで社会保険に加入したときや、昇給や定期的な見直しにより金額が変わったタイミングで通知されます。

また、標準報酬月額は毎月変わるわけではなく、後述する定時決定や随時改定のタイミングが来るまでは原則として変わりません。

「報酬」には残業代や交通費も含まれる

社会保険における「報酬」は、名称に関係なく、働いた対価として事業主から受け取るすべてのものと定義されています。

臨時に支払われるものや、年3回以下の賞与などは除かれますが、残業代や通勤手当は報酬に含まれます。具体的には以下のように区別されます。

・報酬に含める:基本給、時間給、役職手当、家族手当、住宅手当、通勤手当、残業手当など

・報酬に含めない:慶弔見舞金、傷病手当金、年3回以下支給の賞与など

式にすると下のようなイメージです。

報酬月額=1か月の間に会社から支払われた総支給額−報酬に含めないものの金額

会社と従業員で「半分ずつ」負担する保険料―計算の流れを確認しよう

計算方法は?

社会保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担します(労使折半)。

具体的には、健康保険・介護保険・厚生年金保険のそれぞれについて、以下の計算式で計算された金額が給与から控除されています。

従業員の負担額 =標準報酬月額 × 保険料率 ÷ 2 

この計算で使用する「保険料率」は、保険の種類ごとに次のような違いがあります。

・健康保険:加入する保険者(運営主体)によって異なる(協会けんぽは都道府県ごとに異なる)

・介護保険:加入する保険者(運営主体)によって異なる(協会けんぽは全国一律)

・厚生年金:全国一律(どの保険者でも同じ率を使う)

等級表はどうやって確認する?

報酬月額が255,000円の人を例に確認してみましょう。

等級表に当てはめると、赤枠で囲んだ「健康保険・介護保険20等級(厚生年金保険はカッコで示された17等級)」の欄になります。

表にある「全額」とは会社と従業員の負担分を合わせた保険料で、会社が保険者(運営主体)にまとめて納めます。「折半額」はその半分で、従業員の給与から引かれる金額です。

また、青枠の部分は保険料率です。介護保険料率は、第2号被保険者に「該当する」場合と「該当しない」場合の料率の差から確認できます(令和8年度の場合は11.47%-9.85%=1.62%)。

なお、「子ども・子育て支援金」は令和8年4月分から徴収がはじまった制度で、負担額は全国一律の料率(令和8年度は0.23%)をもとに求められます。20等級の場合であれば299円です。

ここまでを踏まえて、年齢別の実際の控除額は以下のとおりです。

■39歳までの方:介護保険料の負担なし

健康保険料 12,805円+厚生年金保険料 23,790円+子ども・子育て支援金 299円=36,894円

■40歳〜64歳の方:介護保険第2号被保険者
(上記に加えて、介護保険料2,106円(標準報酬月額26万円×1.62%÷2)が控除される)

健康保険料と介護保険料の合計 14,911円+厚生年金保険料 23,790円+子ども・子育て支援金 299円
=39,000円

介護保険料と子ども・子育て支援金は、会社によっては給与明細上で健康保険料に合算して表示されているケースもあります。もし40歳以上で明細に記載されていない場合は、等級表の金額と照らし合わせてみるとよいでしょう。

料率は毎年見直されますので、最新情報はホームページなどで確認するようにしてくださいね。

賞与は給与とは計算方法が異なる

一般的に賞与は年2回支給される企業が多いですが、賞与にかかる社会保険料は別の方法で計算します。具体的には、賞与額の千円未満を切り捨てた金額(標準賞与額)に料率をかけることで計算します。

給与のように等級に当てはめる必要はありません。なお、使用する料率は給与の場合と同じです。

いつ見直される?知っておきたい保険料が変わるタイミング

社会保険料の金額は「一度決まったら退職までずっと同じ」ではありません。

社会保険料が変わる主な理由は、「標準報酬月額が変わること」と「保険料率が変わること」です。このうち、標準報酬月額が変わるタイミングには「定時決定」と「随時改定」があるため、社会保険料が変わるタイミングは次の3つに分けられます。

① 年1回の定期的な見直し「定時決定(ていじけってい)」

毎年「4月・5月・6月」の3カ月間に支給された給与の平均額をもとに、その年の9月分〜翌年8月分までの標準報酬月額を決定します。これが「定時決定」です(実務では「算定」と呼ばれます)。

「4〜6月に残業を多くすると、秋からの社会保険料が高くなる」と言われるのはこのためです。ただし、会社の給与の締め日と支給日の関係によっては、実際には3~5月の残業によって判定されるため注意しましょう。

② 給与が大きく変わったときの見直し「随時改定(ずいじかいてい)」

昇給や降給、手当の変更など、固定的賃金(基本給や各種手当など、毎月決まって支給される賃金)が変わったことで給与が大きく変動した場合には、年の途中でも見直しが行われます。

これが「随時改定」です(実務では「月変」と呼ばれます)。ただし、固定的賃金が変わらず、残業代のような月ごとに増減する賃金だけが変わった場合は、随時改定は行われません。

具体的には、固定的賃金が変わった月から3か月間の平均額を計算し、もとの標準報酬月額と比べて「2等級以上」の差が生じた場合に改定されます。

改定されると、変動があった月から数えて4カ月目分の社会保険料から変わります。例えば10月に支給された給与に変動があった場合には、1月分の社会保険料から変わる仕組みです。

③保険料率の改定

保険料率そのものが改定された場合も、控除される社会保険料は変わります。

協会けんぽの場合、健康保険と介護保険は毎年見直しが行われ、原則として3月分(翌月控除なら4月支給の給与)から新しい料率が一斉に適用される仕組みです。一方、組合健保の場合は、組合ごとに見直しの時期が異なります。

なお、厚生年金保険料率については、平成29年(2017年)まで段階的な引き上げがありましたが、同年9月以降は18.3%で固定されています。

給与に社会保険料の変動が反映されるタイミングは一般的に「翌月」

社会保険料は「その月分の保険料を、翌月に支払う給与から引く」という「翌月控除」が一般的です。

たとえば、前述の「定時決定」では、新しい標準報酬月額が9月分の社会保険料から反映されますが、末日締め・翌20日払いの会社であれば、実際に金額が変わるのは「10月20日に支給される給与から」となります。

まとめ|仕組みを知れば、社会保険料の変化がわかる

社会保険料は、標準報酬月額や保険料率をもとに計算され、定時決定や随時改定などのタイミングで金額が変わります。仕組みを知っておけば、給与明細の控除額が変わったときも「なぜ増えたのか」「いつから変わったのか」を自分で確認しやすくなります。

社会保険料が上がれば、その分手取り額は減るため、負担が大きいと感じても無理はありません。一方で、将来受け取る厚生年金や健康保険の傷病手当金・出産手当金などの給付額にも関係します。

これまで「給与明細を見てもよくわからなかった」という人も、この記事を参考に、自分の社会保険料を改めて確認してみてはいかがでしょうか。

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